アマテラス  弟・スサノヲに悩む

 泣き虫スサノヲは父・イザナギに国を追われ、暴れ者に変身。姉・アマテラスが大切にしている田の畦を崩し、祈りの場を汚し、機織り女を死に追いやる。優しいアマテラスは困惑の末、岩戸に籠もるしかなかった。

  
霊水が湧き出す真名井神社(左)と拝殿。天から贈られた水

 イザナギに国を“出て行け”と叱られたスサノヲは姉のアマテラスに別れを告げる名目で天上の姉を訪ねるが、天に上ろうとするだけで,山河,大地は揺れ動いた。

「どう考えても弟は良い考えからここへ来るとは思えない。私の国を奪おうとしているのだろう」

 おとなしい姉だが、戦いになるかも知れないと、アマテラスは髪をほどき、男のように髪を巻き直し、左右の手首に八尺(やさか)の勾玉など飾りを絡め、背中には千本の矢を、脇腹にも500本の矢を入れた筒を着けて,弓を持ち大地をしっかり踏みしめて雄々しく叫んだ。



アマテラスは」荒れる下界からスサノヲが上ってくるのを弓を持って見つめた


「おまえは何のために上ってきたのだ」

 「父が“何故泣くのlだ”と聞くので、母の国へ行きたい、と答えると、おまえはこの国に住むことはならぬ、と追われたので、そのことを告げに来たのです」

 アマテラスはスサノヲの心が清いかどうかを確かめるために、二人は天の安河をはさんで両岸に立ち、それぞれ誓いを立てて子を成す事にした。心が清くなければ、生まれてくる子供も穢れて
いるだろう。そうではないことをスサノヲも実証したかった。

真名井神社は幾つもある。天の橋立の北の神社、淡路島の何カ所か、出雲地方にも、さらにここ宮崎でも参拝することになった。

「水で清める」は現代でも生きた言葉で時に使われる。真名井の水から伝わった事なのだろうか。

  アマテラスはスサノヲが腰に佩いていた十拳剣(とつかのけん)を取り。天の真名井の水で清め、いい音を立ててかみ砕き、フッと吹き出せば、霧のような吐息から三人の女の子が生まれた。スサノヲはアマテラスの髪飾りの珠を乞い、真名井の水で清め,かみ砕いて吹くと5人の男の子が生まれた。

 「五人の男の子は私の持ちものから生まれたので私の子。先に生まれた三人の女の子は、お前の持ち物から生まれたのでお前の子という事になる」

先に生まれた三人の女の子は宗像神社、三宮にそれぞれ坐す。沖の島、大島、田島がそれ。福岡県宗像郡にあるのが今の地名。後から生まれた五人の神、さらにその子たちは出雲を始め、多く国造りに散った。

幽霊ババーを叩け。扉が開く

 「私の勝ちです。心の清いことが証明されました。私の生んだのは三人の優しい女の子ですから…」とスサノヲは勝ち誇ってアマテラスに言った。そして、アマテラスの営む田の畦を壊し、溝を埋め、収穫を感謝する神殿に糞尿をまき散らした。アマテラスはそんな乱暴沙汰をすべて良い方に考え、弟のやることを咎めなかった。

しかし、そうは考えていられない事件が起こった。建物の屋根を破り、馬の皮を投げ込んだ。そこは機織りの場所だった。驚いた織女に弾みで織機で横糸を通すのに使うヒが突き刺さり死んでしまった。

さすがのアマテラスもやりきれなくなって、高天の原にある岩窟に閉じこもってしまった。