

黄泉の国はわかりやすく言うと閻魔大王の支配する”闇世界”だろう。新参の伊邪那美が「元の世界へ返していただけませんか」と言うのを聞いて、デカイ声で怒鳴りつっけた。黄泉の国では決まりがある。この国の“飯を食ったら”それがたった一度であっても,閻魔大王にひれ伏したことになる。黎明期のあの世は、まだまだ人不足で、閻魔大王も子神は大いに欲しい。
一宿一飯の恩義?それとも杯を交わしたか…。伊邪那美は待てど暮らせど戻ってこない。
「面倒だ!ここにある伊邪那美の骸を確かめてやろう」
伊邪那岐は“禁じ手”を覗き見した。何という事だ。伊邪那美の体にはウジ虫が盛り上がるように蠢き、頭、胸、腹、股、両手、両足の八カ所には雷が住み着いているではないか。”こりゃ、いかん”
で伊邪那岐は逃げだそうとした。

山桃の木
「見たな-」
ここは冥界。どんなことでも起こる。黄泉の神のもとで冥界から出るよう、談判しているはずの伊邪那美が起き上がってなじった。
「ま、ま、待ってくれ」といったかどうか。伊邪那岐は黄泉比良坂目指しての”大脱走”となった。
「あたしに恥をかかせた。許さないよ」
冥界で穢れた女たちに追わせた。
伊邪那岐はヘアバンドのように額から後ろへと巻き付けていた黒御鬘を投げつけると、たちまちブドウとんり、追っ手が拾って口にしているうちに距離を稼いだ。まだ追ってくるので、今度は櫛の歯を一本折って投げると、これは筍に変わり、追っ手はそこで食べたのだったが、間もなく追い始めた。しかし、逃げ足は速く、冥界を脱出される恐れがあったためか、伊邪那美は八柱の雷神に1500人の軍隊を付け追わせ続けた。伊邪那岐は十拳剱を抜き、後ろで振り回しながらの逃走。

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頑張った伊邪那岐は黄泉の比良坂へたどり着いた。直前には桃を取り、投げつけた。古事記には3個とある。1500人軍勢に3個の桃を投げつけて、いかほどの効果があるのかねー。神話、その中の冥界の話しじゃ、聞きおき、信じる,信じないはあなたの勝手。比良坂の坂本は現世と冥界の境だが、自らも追ってくる伊邪那美を留めるために、1000人でようやく引き動かせる巨石を置いて防いだ。
1000人掛かりではないと引けない大石、とあるが近寄って触ってみたが、それほど大きくはない。エジプト・ガザのピラミットを構成している大きな切り出された石一個ていどだった。待て待て、神話の世界を現世の尺度で測るな。
巨石をはさんで伊邪那岐、伊邪那美は対峙した。
「愛すべき私の夫よ。こうなってしまったら私は、一日1000人をくびり殺すわ」
「そうか。愛しき妻よ。そうするなら私は一日1500の産屋を建てる」
かくして一日1000人が死に、1500人が生まれる。その黄泉比良坂は出雲の国の伊賦夜坂(いふやざか)と言う。
仲良く国や神々を生んできた伊邪那岐、伊邪那美は黄泉の比良坂で決定的な別れとなった。駐車場から上へ登り、左へ50㍍ほど歩くと黄泉の国との境界になる石柱がある=トップ写真=。細いしめ縄が張られ、そこをくぐると樹林に囲まれた広場があった。大きな石が有り、樹林の合間に桃の木があったが、細い幹で到底古木とは言えない。この木に軍勢を追い払った桃が実ったのではなく、何代も前の木がこの地にあったという事だろう。
古事記に登場する最初の女性は、一旦世を去り、冥界へ旅立った。蘇りはしなかったが,さらに神々を誕生させた。そして、悠久の宇宙を連想させる物語(伝説)は、伊邪那美を残して進む時代を辿る。
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